鼠径部ヘルニアの診断方法

鼠径部ヘルニアの診断
鼠径部ヘルニアは、下腹部の足の付け根あたりがポッコリ膨らむ病気です。一般的には“脱腸”とも呼ばれていますが、“脱腸”は正式な医学用語ではありません。立っていると膨隆し、寝ると膨隆がなくなってしまうことがある病気です。初期症状では日常の生活で、ある程度の違和感はあっても、強い痛みが出ることは多くの場合ありません。鼠径部ヘルニアは、おなかの中の臓器(小腸、大腸、大網などの脂肪、卵巣、子宮など)が腹壁から外に飛び出て膨隆してくるおなかのヘルニアです。腸が出ることが多いので、“脱腸”と呼ばれているのです。鼠径部ヘルニアの診断は、基本的に問診と患部の視診・触診で行われます。超音波検査やCT検査も用いられることがあります。治療法は鼠径部切開法や腹腔鏡下修復術などの手術が一般的です。

画像診断は推奨される?
日本ヘルニア学会のガイドラインでは、必ずしも必要ではない、という考えですが、日帰り手術という治療において鼠径部ヘルニアの診断には画像診断が推奨されています。具体的には超音波検査やCT検査が行われることがあります。これらの検査は、ヘルニアの位置や大きさ、腹壁の状態などを評価するのに役立ち手術時間の短縮や術式の決定に欠かせないものと考えています。ただし、診断は問診と視診・触診によっても行われるため、医師の指示に従って適切な検査を受けることが重要です。

超音波検査とCT検査の違いは?
腹部超音波検査とCT検査は、それぞれ腹部領域において非常に有用な検査です。 どちらも臓器や組織の評価に役立ちますが、使い分けにはいくつかの違いがあります。
超音波検査は、電源を入れると1分ほどで迅速に行え、体表にゼリーを塗り、超音波を発する機器から跳ね返ってきた情報をモニターに映し出します。臓器の異常や腹腔内の出血、腫瘤などを描出します。メリットとして、体に害や苦痛がなく、短時間で広範囲を検査できる点があります。ただし、内部の空気を含む管腔臓器や肥満の場合、検査精度が限られることがあります。
CT検査はX線を用いて体を輪切りにした情報を画像化します。超音波検査よりも情報量が多く、ガスや骨の下にあるものも見ることができます。被爆のリスクがあるため、子供や妊婦では超音波検査を優先します。CT検査は、重症度や緊急性を判断する際に有用です。
どちらの検査を選択するかは、患者さんの状態や目的によりますので、医師の指示に従って適切な検査を受けることが大切です。

CT検査の被爆リスクについて
CT検査ではX線を使用するため、放射線被ばくは避けられません。しかし、CT検査で受ける被ばく線量は、撮影部位や撮影方法によって異なります。一般的には1回あたり20mSv以下です1。この程度の放射線量では、がんのリスクの増加は実証されていません。放射線診断の便益は、病気の早期発見や適切な治療につながることを考慮すると大きいです。

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