鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を開けて、腹腔鏡という内視鏡で鼠径部を修復する手術です。
腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術には、いくつかの種類がありますが、それぞれの術式についてご紹介いたします。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、腹部に小さな穴を数カ所開け、そこから内視鏡と手術器具を挿入して行う手術です。従来の開腹手術に比べて、傷が小さく、術後の痛みが少ない、早期の社会復帰が可能などのメリットがあります。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術には、主に以下の2つの術式があります。
- TAPP(経腹膜到達法): 腹腔内からヘルニア門を確認し、メッシュで補強する方法です。
- TEP (完全腹膜外修復法): 腹膜の外側からヘルニア門を修復する方法です。
どちらの術式を選択するかは、患者さんの状態やヘルニアの種類、手術を行う医師の経験などによって異なります。
以下に、一般的な腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)の手順を詳しく説明します。
- 麻酔: 全身麻酔で行われます。
- 体位: 患者さんは仰向けに寝た状態で手術を受けます。
- ポート挿入: 臍(へそ)とその周辺に、数カ所(通常3カ所)の小さな皮膚切開(約5mm)を行います。これらの切開創から、内視鏡(腹腔鏡)や手術器具を挿入するための筒状の器具(ポート)を挿入します。
- 気腹: 腹腔内に二酸化炭素ガスを注入し、手術のためのスペースを確保します。
- 腹腔内観察: 挿入された腹腔鏡を通して、腹腔内の様子をモニターで確認します。ヘルニア門の位置や状態、周囲の組織などを詳しく観察します。
- 腹膜切開: ヘルニア門の周囲の腹膜を切開します。
- ヘルニア嚢処理: ヘルニアの内容物(腸や脂肪など)を元の位置に戻し、ヘルニア嚢(ヘルニアが収まっている袋状の組織)を剥離、切除または内反固定します。
- メッシュ設置: 人工のメッシュシートを、ヘルニア門を覆うように設置します。メッシュは、腹壁の脆弱な部分を補強し、再発を防ぐ役割を果たします。
- メッシュ固定: メッシュがずれないように、生体吸収性のクリップや縫合糸などを用いて固定します。
- 腹膜閉鎖: 切開した腹膜を、吸収性の糸で縫合閉鎖します。
- 気腹解除とポート抜去: 腹腔内の二酸化炭素ガスを排出し、挿入していたポートを抜去します。
- 皮膚縫合: 皮膚の切開創を縫合します。多くの場合、吸収性の糸が用いられるため、抜糸は不要です。
TEP法の場合:
TEP法では、腹膜を切開せずに、腹壁の筋肉と腹膜の間の層(腹膜外腔)にポートを挿入し、このスペース内でヘルニアの修復を行います。腹腔内に入ることはありません。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術のメリット:
- 創が小さい: 従来の開腹手術に比べて、傷跡が目立ちにくいです。
- 術後の痛みが少ない: 小さな創であるため、術後の痛みが軽減されます。
- 早期の回復: 回復が早く、早期の社会復帰が可能です。
- 反対側のヘルニアの確認: 手術中に反対側の鼠径部にヘルニアがないか確認できます。
- 両側同時手術: 両側の鼠径ヘルニアを同時に手術することが可能です。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術の注意点:
- 全身麻酔が必要となります。
- 手術時間は、開腹手術と比較してやや長くなることがあります。当院の平均時間は30〜35分です。
- ごくまれに、腹腔内臓器の損傷や出血、感染などの合併症が起こる可能性があります。
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東京浅草キュアメディクス 理事長
松田 年 (まつだ みのる)
医学博士・外科専門医・内視鏡外科学会技術認定医旭川医科大学卒業後、日本大学病院で、胃・食道・大腸などの消化器癌手術を数多く経験。中でも内視鏡・腹腔鏡を使った外科手術は日本国内でも最も早く取り入れた一人である。2015年より外科の日帰り手術を専門とする医療に取り組み2018年に旭川キュアメディクス開院。その経験から、2024年に東京浅草キュアメディクス開院。
鼠径ヘルニアの日帰り手術を中心に、患者さまの満足度の高い日帰り手術の提供を日々研究しています。