日帰り手術と入院手術の違い
鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術は、傷が小さく身体への負担が少ないため、近年では日帰り手術が広く行われるようになっています。手術内容自体は、日帰りでも入院でも基本的には同じです。主な違いは、手術後の過ごし方にあります。
1. 術後の過ごし方
- 日帰り手術: 手術後、数時間程度の回復期間を経て、その日のうちに自宅に帰宅します。自宅で安静に過ごし、回復を待ちます。
- 入院手術: 手術後、数日から1週間程度(病院や患者さんの状態による)病院に入院し、医療スタッフの管理下で回復を待ちます。
2. 医療費
- 日帰り手術: 入院費用がかからないため、入院手術に比べて総額の医療費が安くなります。
- 入院手術: 入院費用(病室代、食事代など)が別途発生するため、日帰り手術よりも費用が高くなります。
3. 社会復帰・日常生活への影響
- 日帰り手術: 早期に自宅に戻れるため、日常生活のリズムを崩しにくく、仕事や家事への復帰も早いです。入院に伴う準備やわずらわしさもありません。
- 入院手術: 入院期間があるため、仕事や家事を休む期間が長くなります。また、慣れない環境での生活による精神的な負担を感じる場合もあります。
4. 精神的・身体的負担
- 日帰り手術: 自宅という慣れた環境で過ごせるため、精神的な負担が軽減されることがあります。ただし、術後の痛みや不安に対して、すぐに医療スタッフに相談できないという点がデメリットとなる可能性もあります(ただし、多くのクリニックでは24時間対応の電話サポートなどを提供しています)。
- 入院手術: 病院で医療スタッフが常にいるため、術後の痛みや体調の変化に対して、すぐに適切な処置を受けられる安心感があります。
費用対効果
費用対効果を考える上で重要なのは、単なる医療費の比較だけでなく、社会生活への影響や、精神的な側面も考慮することです。
日帰り手術の費用対効果
- 費用面: 入院費がかからない分、自己負担額が抑えられます。腹腔鏡手術の場合、3割負担で約10〜12万円程度が目安とされています。高額療養費制度を利用すれば、所得に応じた上限額を超えた分は払い戻しがあるため、さらに負担を軽減できます。
- 時間的・社会的側面: 早期に社会復帰できるため、仕事の休みを最小限に抑えられ、収入への影響を減らせます。また、家族への負担も軽減されます。
- 精神的側面: 自宅で過ごせるため、精神的なストレスが少ないと感じる方も多いです。
入院手術の費用対効果
- 費用面: 日帰り手術に比べて、入院費用が追加で発生するため、総額の医療費は高くなります。3割負担で約15〜20万円程度が目安とされています(入院日数により変動)。
- 時間的・社会的側面: 入院期間があるため、仕事や家事を休む期間が長くなり、収入や家族への負担が増える可能性があります。
- 精神的側面: 病院という管理された環境で安心して回復に専念できるというメリットがあります。特に、高齢の方や基礎疾患がある方、術後の不安が大きい方には、この安心感が大きなメリットとなります。
どちらを選ぶべきか?
多くの鼠径ヘルニアは日帰り手術での対応が可能であり、費用や社会復帰の早さを考慮すると、日帰り手術の方が費用対効果が高いと言えます。特に、以下のような方には日帰り手術が適している可能性が高いです。
- 比較的若く、健康状態が良い方
- 仕事や家庭の事情で長期の休みを取りにくい方
- 自宅で安静に過ごせる環境が整っている方
- 精神的なストレスを避けたい方
一方で、以下のような場合は入院手術を検討する方が良いでしょう。
- 高齢の方や、糖尿病、心臓病などの基礎疾患がある方(日帰り手術の適応外となる場合があるため)
- 術後の合併症のリスクが高いと判断される場合
- 自宅での術後管理に不安がある方
- 精神的な安心感を重視したい方
入院手術の時間的ロス
- 入院期間そのもの: 数日から1週間程度の入院期間は、完全に日常生活から離れる時間です。仕事、学業、家事、趣味など、普段行っている活動を中断する必要があります。
- 入院準備と退院手続き: 入院前には持ち物の準備、家族への連絡、仕事の引き継ぎなどが必要です。退院時も、精算や処方薬の受け取りなどで時間を要します。
- 入院中の制約: 病院内では行動が制限され、自由に外出したり、自分のペースで時間を過ごしたりすることができません。
- 社会復帰までの期間: 退院後すぐに通常の活動に戻れるわけではなく、自宅療養期間が必要な場合もあります。日帰り手術に比べて、社会復帰までの総期間が長くなる傾向があります。
日帰り手術の時間的ロス
- 手術当日のみ: 手術を受けるための準備(来院、着替えなど)、手術そのもの、術後のリカバリー(数時間)のみが、通常の活動から中断される時間です。
- 術前・術後の通院: 手術前の診察や検査、手術後の経過観察のための通院は必要ですが、これは入院手術の場合も同様に発生します。
- 早期の社会復帰: 手術の翌日あるいは数日後には、デスクワークなどの軽い活動であれば再開できることが多く、身体への負担が少ないため、比較的早く通常の生活に戻れます。
まとめ
このように、入院手術は入院期間そのものが時間的なロスとなり、社会生活からの離脱期間が長くなります。一方、日帰り手術は手術当日の数時間のみが主なロスであり、日常生活への復帰が非常に早いため、全体的な時間的ロスは大幅に少なくなります。
時間的な制約が大きい方(例:自営業者、有給休暇が限られている会社員、小さな子供がいる方など)にとっては、日帰り手術のこの「時間的ロスの少なさ」は非常に大きなメリットとなります。
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東京浅草キュアメディクス 理事長
松田 年 (まつだ みのる)
医学博士・外科専門医・内視鏡外科学会技術認定医旭川医科大学卒業後、日本大学病院で、胃・食道・大腸などの消化器癌手術を数多く経験。中でも内視鏡・腹腔鏡を使った外科手術は日本国内でも最も早く取り入れた一人である。2015年より外科の日帰り手術を専門とする医療に取り組み2018年に旭川キュアメディクス開院。
その経験から2024年に台東区で初の日帰り手術専門のクリニックである、東京浅草キュアメディクス開院。
鼠径ヘルニア日帰り手術を中心に、患者さまの満足度の高い日帰り手術の提供を日々研究しています。