女性の鼠径部に膨らみやしこりを感じる場合、その原因として「鼠径ヘルニア」がよく知られていますが、「ヌック管水腫(Nuck管水腫)」という病気も考えられます。両者は症状が似ているため、正確な診断が重要です。
ヌック管水腫とは?
ヌック管水腫は、女性特有の疾患です。胎児期に存在する「ヌック管」という組織が、出生後に閉鎖せずに残ってしまい、その中に液体が溜まって嚢胞(袋状のしこり)を形成する病気です。
- 原因: ヌック管は、本来、胎児期に子宮を支える靭帯(子宮円索)とともに鼠径管を通る腹膜の鞘状突起という構造物です。通常は生後1年以内に自然に閉鎖しますが、何らかの原因で閉鎖せずに遺残し、その中に腹水などが溜まることで水腫となります。
- 症状: 鼠径部に柔らかい、または少し硬いしこりや膨らみが現れます。大きさは様々で、指で押しても引っ込まないことが多いです。痛みはあまり強くない場合が多いですが、違和感や軽い痛みを伴うこともあります。生理周期に合わせて痛みが強くなったり、しこりが大きくなったりするケースもあります。これは、稀にヌック管水腫の中に子宮内膜症が合併していることがあるためです。
- 特徴:
- 主に20代~40代の比較的若い女性に多く見られます。
- 鼠径ヘルニアのように、腸が飛び出してくるわけではないため、腸が締め付けられる「嵌頓(かんとん)」のリスクはありません。
- 生理周期に関連して症状が変動することがあります。
鼠径ヘルニア(脱腸)とは?
鼠径ヘルニアは、鼠径部の筋膜や筋肉の隙間から、お腹の中の臓器(主に腸)が皮膚の下に飛び出してくる病気です。
- 原因: 鼠径部の組織が弱くなることで発生します。加齢、妊娠・出産、慢性的な咳、便秘によるいきみ、重い物の持ち上げなど、腹圧が繰り返し加わることなどが原因となります。
- 症状: 鼠径部に柔らかい膨らみやしこりが現れます。立っている時や咳、いきみなどでお腹に力が入ると膨らみが大きくなり、横になったり、手で押さえたりすると元に戻ることが多いです。違和感や軽い痛み、進行すると強い痛みが生じることもあります。
- 特徴:
- 女性にも発生しますが、男性に多く見られます。
- 飛び出した臓器が締め付けられる「嵌頓(かんとん)」を起こすリスクがあり、その場合は緊急手術が必要となる可能性があります。
ヌック管水腫と鼠径ヘルニアの比較
検査と診断
鼠径部の膨らみがある場合、自己判断はせずに医療機関を受診することが大切です。正確な診断のために、以下の検査が行われます。
- 視診・触診: 医師が直接膨らみの状態や硬さ、押したときの変化などを確認します。
- 超音波検査(エコー): 最も有効な検査の一つです。膨らみの内容物が液体なのか、臓器なのかをリアルタイムで確認できます。ヌック管水腫の診断に非常に有用です。
- CT検査・MRI検査: より詳細な情報を得る必要がある場合や、他の疾患との鑑別が必要な場合に行われることがあります。
治療
- ヌック管水腫: 症状が軽度で生活に支障がなければ、経過観察となることもあります。しかし、大きくなったり、痛みを伴ったり、見た目が気になる場合は、手術による摘出が推奨されます。稀に子宮内膜症が合併している場合もあり、その際も手術が必要となります。
- 鼠径ヘルニア: 自然治癒することはないため、手術による治療が必須です。腸が飛び出したまま放置すると、嵌頓を起こし、腸壊死などの重篤な状態に至る可能性があるため、早期の手術が推奨されます。
おわりに
女性の鼠径部に膨らみを見つけた場合、それがヌック管水腫であっても鼠径ヘルニアであっても、適切な診断と治療を受けることが重要です。特に鼠径ヘルニアは、放置すると命に関わる合併症を引き起こす可能性もあります。少しでも気になる症状があれば、お早めに消化器外科や一般外科などの専門医にご相談ください。
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東京浅草キュアメディクス 理事長
松田 年 (まつだ みのる)
医学博士・外科専門医・内視鏡外科学会技術認定医旭川医科大学卒業後、日本大学病院で、胃・食道・大腸などの消化器癌手術を数多く経験。中でも内視鏡・腹腔鏡を使った外科手術は日本国内でも最も早く取り入れた一人である。2015年より外科の日帰り手術を専門とする医療に取り組み2018年に旭川キュアメディクス開院。
その経験から2024年に台東区で初の日帰り手術専門のクリニックである、東京浅草キュアメディクス開院。
鼠径ヘルニア日帰り手術を中心に、患者さまの満足度の高い日帰り手術の提供を日々研究しています。